本当にアクセスが増えていて驚いています。
この問題についての皆様の関心の高さがうかがえるとともに、自分の文章を何千人の人が読んでくださるというのは、あらためて身の引き締まる思いです。
前回のブログで医療崩壊の原因を概括しました。
そしてその上で
(1)サービスに対するニーズがあるのに不当な価格を強制していることが医療崩壊を招いている。したがって原則として混合診療を解禁し、価格決定をマーケット、すなわち医療機関と患者に任せる。株式会社による病院経営、民間保険による自費診療カバーをあわせて解禁し、医療法による病床規制も撤廃する
(2)価格が品質(要求されるサービスの質)に対して不当に安いことが崩壊の原因と考えられる。対策として公的保険でのカバーを維持しつつ価格を上昇させる。すなわち診療報酬を引き上げ、これに伴い公的医療費支出を引き上げる
(3)価格を引き上げないのにサービスに対する要求が上昇していることが問題なので、放っておいてサービスの質が引き下がるに任せる。具体的にはアクセス、医療内容の低下、産科や小児救急自体の閉鎖など。
の3つの選択肢がありうると述べました。
医療も社会の一部である以上、経済法則の例外ではありえません。
従って、サービスはどこまでも向上させてほしいがコストは自分以外の誰かが負担してほしい、というのは不可能です。
最終的にはこの問題は国民の皆様がどの選択肢を選ぶか、ということに還元されると思います。
ただし、郵政の問題もそうでしたがこのような重い問題はマスコミ的な軽いノリで決めていい問題とは思えません。本来医療の専門家には各選択肢を取るとどうなるかを呈示していく責任があると思っています。私がこのブログでわざわざこの問題を取り上げたのは投資家の素養をもつ皆様にぜひ医療問題の経済的な背景を共有していただきたいと思ったからです。従って、この選択肢をとるべきだ!と私が主張するのではなく、各選択肢を取った場合何が起るのかを専門家の立場から予想していければと思います。
今日からは少し時間をかけて@の選択肢を取った場合、すなわち医療の価格形成をマーケットに任せた場合、医療サービスにどのような変化があるのかを考えていきたいと思います。アメリカの事例や市場のもつ性質から以下のような変化が不可避的に予想されると思います。
変化a:経済力によって受けられる医療の質が変化する。
変化b:医師、看護師など医療者側への競争原理の導入とこれに伴う意識変化
変化c:民間医療保険の巨大マーケットの出現とそれに付随する問題
変化d:総医療費(公的医療費+私的医療支出費)の飛躍的増大
変化e:負担できない人、すなわち貧しい人、そしておそらくは中流層も受けられる医療サービスが質、量とも大幅に低下する
変化f:法的な諸問題の克服
まず変化a:経済力によって受けられる医療の質が変化する。について見てみます。
価格形成を自由化する以上、当然のことです。
その結果、最も多く負担する人、すなわち富者の受けられる医療サービスは間違いなく向上します。
・待ち時間ゼロ
・完全予約制でホテル並みのプライバシーの保たれた個室、一日に頻回の主治医および研修医による診察
・従業員や医療従事者による丁寧な説明、接客
・本人、家族に対する24時間対応の優先受診
・入院中のきめこまやかな心理ケア
・言うまでもなく最高の技量を有する医師による最善の治療
現在、マスコミにより批判される日本の医療の問題点がすべて解消した理想の医療を提供する病院がたくさんできるでしょう。
ただし、対象はあくまでも相応の価格を負担できる方だけです。
エノテカピンキオーレやロオジェといった最高級レストランはシェフもソムリエも接客サービスももちろん最上級です。ただし、全員がサービスを受けられるわけではありません。
なお、巷よく言われる「アメリカの医療はきめこまやかでサービスが優れている。」という主張があります。これも対象はあくまでも相応の価格を負担できる方だけであることを明記しておきます。
次回以降は医療の市場化に伴い変化b〜eが不可避である理由と、その影響を考えてみたいと思います。

