2006年12月07日

医師不足〜厚労省発表のカラクリ

こんにちは。

少し間が空きましたが、前回の続きです。

医師不足問題に対して、一部大学や厚労省は「医師数は不足しているわけではない。臨床研修先を自由に選択できるようになったことにより、若者が過酷な診療科や地方勤務を避けているのがいけない。」と若者気質が問題だと言わんばかりの論調を投げかけています。

2年前から医師の臨床研修制度が変わり、医師は研修先を大学に限らず臨床研修指定病院からも選べるようになりました。大学の言い分は「学生ごときに自由に研修先を選ばせた結果、地方の大学医局に研修医が入局しなくなった。だから医師不足が深刻化したのだ。」ということです。
驚くべきことに新臨床研修制度を主導した厚生労働省も「医師は足りている。診療科と地域の偏在が問題だ。」と主張しています。

どこぞの皮膚科の名誉教授だかが「臨床研修制度は幸せの青い鳥を求める研修医を大量に生み出してしまった。」とか発言していましたが、これも類似の見解と思われます。

彼らの主張をまとめると

「医師数は十分足りているが、若者が生活環境のいい都会を研修先に選び、比較的仕事が楽な(と彼らが思い込んでいる)眼科や皮膚科にばかり行くからいけない。若者気質と医師としての責任感の欠如が問題だ。」

ということのようです。

医師にだって選択の自由はあるはずだ、という自由主義的な反論をする若い先生方もいます。
しかし、反論以前にそもそもこの主張は大嘘です。
以下、この主張がいかに根拠がないかを記載していきます。

・他ならぬ厚労省自身の統計によれば、新臨床研修制度施行前後で研修医の進路先の診療科比率はほとんど変わっていません。つまり「若者が楽な眼科と耳鼻科にばかり流れる。」という主張自体根拠が希薄です。

・「医師数は充足しているが、地方と産科、救急だけが不足している。」というなら、当然医師が余っている地域と診療科があるはずです。具体的には大都市の美容形成、眼科、皮膚科の開業医はとっくに過当競争になっていなければなりません。しかし、実際にはとてもそうなっているとは思えません。

・百歩譲って、(譲りたくないですが)研修医が地方や救急、産科を敬遠しているのが事実だとしてもその影響が現れるのは彼らが一人前になる10年後のはずです。いま不足しているのは地域の一戦で活躍してきたベテラン専門医であり、研修医ではありません。
ベテラン医師不足は慢性的な過重労働による燃え尽き、高齢化による患者数増加に伴う医師の負担増、訴訟リスクの増大、医療費削減政策などが複雑に絡み合った問題ですが、「若者気質」とは直接関係がありません。


こうしてみると、厚生労働省や大学医局、これに便乗するマスコミ報道は、事実を無視して反論の機会が乏しい若者に責任を転嫁しているだけに見えます。

医師数の需給や出生率の見通しなど厚生労働省の統計発表を見ていると、毎回毎回特損を計上し、下方修正を連発する新興企業が思い浮かびます。一体何を考えて予想数字を出しているのか、と。

企業ならこんなことを繰り返せばたちまち株価は急落しますし、いい加減なIRは株主に批判されます。ところが、行政はこうしたフィードバックを受けることがありません。

「最近の若者はけしからん!!医の倫理が希薄だ!!」などというワイドショーの宣伝に国民の皆様が乗せられないことを希望します。
posted by たけ先生 at 20:57| Comment(13) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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