2006年09月03日

日本国債の将来

こんにちは。

今日は日本国債の将来予想です。

今回の自民党総裁選でも、財政再建と社会保障費増大のための増税が重要争点になっています。
増税、年金不安、医療崩壊、地方の衰退はおおむね政府の財政削減政策に原因があるので、膨れ上がる赤字国債は日本全体に暗い影を落としていると言えると思います。


確かに日本の国債残高は巨額です。
国債発行残高は2006年(平成18年)3月末現在に於いて670兆5794億円です。

さらに政府の借入金が59兆2737億円、政府短期証券が97兆6274億円あり、これに国債の670兆5794億円を加えた827兆4805億円が国の借金になります。

ただし、国債発行残高で重要なのは額ではなく、GDPです。
日露戦争当時、日本政府が1億円借金すれば大騒ぎになりました。
今日では誰も1億円の国債では騒がないので、GDP比と増大速度が問題になるわけです。


2005年度の日本の実質GDPが約540兆円なので、国の借金は大体実質GDPの1.5倍になります。

「国の借金残高と実質GDP比が日本は諸外国に比べてきわめて高い!!
 このままでは日本が破産してしまう!!だから消費税増税だ!!年金切り下げだ!!医療費は削減だ!!」

と毎日毎日声高に財務省は叫んでいます。
今度の自民党総裁選にも財務省の代弁者としか思えないような候補が消費税増税を提唱しています。

しかし、この主張は財務省によるポジショントークの可能性があります。
基本的に彼らは税率を高くすればするほど、再分配の権限が大きくなるので権益が増大します。したがって、財務省には「財政がどうであろうと、基本的に増税したい。」というモチベーションが働きがちです。

「諸外国に比べて極めて高い!」は事実でも日本には諸外国に比べて有利な事情がいくつもあります。

日本の有利な事情として

@家計部門が1500兆もの巨額の金融資産を有しており、しかもその大半が銀行や郵便局に預けられている。

A日本は巨額の貿易黒字を出し続けており、政府、民間とも膨大な外貨を保有している。

B日本国債の9割以上が国内で発行されている

といった点があげられます。

「何を楽観論を!」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、その答えはマーケットが出しています。
日本国債の長期金利は昨日付けで1.6%と先進国中最低水準です。

そして、長期国債というのは短期国債と違い純粋に市場で価格が決定されます。つまり、1.6%の金利で日本国債を買いたいと思う人がたくさんいるからこの価格がつくわけです。

本当に日本国債の返済能力に重要な疑問符があるなら、(GM社債のように)リスクプレミアムが上乗せされて、金利が高くなるはずです。
それがこのような低金利になっているというのは、それ自体日本国債の返済能力にそれほど疑問をもたれていないということです。

日本国債破綻本を読むとそろいもそろって大インフレ大円安で輸入品が買えなくなる。だから今のうちに外貨を買っておこうと主張しています。

しかし、上の有利な条件@〜Bはインフレや円安を極めて起こしにくい方向に作用します。
この辺の話はあまりメディアでも取り上げられていないので、次回は@〜Bの条件がなぜインフレや円安を起こしにくいのかを解説します。
posted by たけ先生 at 11:42| Comment(14) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。

「国の借金残高と実質GDP比が日本は諸外国に比べてきわめて高い!! このままでは日本が破産してしまう!!」という命題が仮に正しくても、「だから消費税増税だ!!年金切り下げだ!!医療費は削減だ!!」という結論は、論理必然的な結論ではありませんよね?後段は、「だから政府資産は可能な限り売却だ!不要な公益法人や特殊法人は廃止だ!民営化できる部門は全て民営化せよ!」でも構いません。

国債の金利が非常に低いということは、リスクプレミアムを織り込んでいないから財政は破綻しないとも考えられますし、一種のバブルであり、バブルが終われば金利が急騰することを示唆しているとも考えられますので、この事実のみから一義的な結論を導くことは難しいといえます。いずれにしろ、財政破綻肯定派・否定派ともに、自分に都合のよいデータだけを引用しているだけのように見えます。

一つ確かなことは、プライマリーバランスが均衡していない現状を続ければ、いずれ税収が金利支払いに消えてしまう事態となり、さすがにそのような事態になれば国債の金利は上昇せざるを得ないということです。問題は、政治的・経済的にプライマリーバランスの均衡が可能かということですが、高齢化が急速に進展していることと、地方交付税のこれ以上の削減が難しいことを考えると、それほど容易ではないといえそうです。
Posted by PALCOM at 2006年09月03日 20:51
すばらしいご指摘ありがとうございます。
まったくおっしゃるとおりでプライマリーバランスは正常化させなければなりません。
私が今回のテーマで気に入らないのは財務省がほとんど経済成長を加味せず、議論を進展させていることです。
仮に消費税を15%にして、年金を1割カット、医療にかかる自己負担をアメリカ並にしたらとてつもない不景気になり、税収も成長も伸びないでしょう。
そうなれば結局国民生活が破綻した上に財政再建は不可能です。
プライマリーバランスの正常化をはじめ財政再建はあくまで成長との兼ね合いの中で行っていかなくてはならないと考えられ、その意味で谷垣候補の意見に賛成することはできません。
Posted by たけ先生 at 2006年09月03日 21:30
こんばんは。

「財務省がほとんど経済成長を加味せず、議論を進展させている」というご意見、全く同感です。

実際、「下落見越し空売りを仕掛けるヘッジファンド−消費税引き上げが、国債下落の引き金を引くと見ている米国のヘッジファンドは、空売りで儲けを狙っている。」という記事が、既に2年前のエコノミスト誌(2004年9月21日号p.90)に出ています。この記事では、増税ではなく、減税しろとまで言い切っています。

記事で提示されている消費税増税から国債下落までの道筋は、「消費税増税+緊縮財政→景気の急速な悪化→公共工事の増大→赤字国債乱発→金利上昇」という非常に分かりやすいもので、個人的にもおそらくこのようになると思います。

ところで、単なる増税というのは、民間企業でいえば社員の給与カットとのようなもので非常に安直な方法です。やはり求められているのは、日本の成長率を上昇させていく産業をどこに求めるか、不採算部門(=政治力が大きいことが多い)をどのように縮小して採算部門に移していくかという攻めのリストラの視点でしょう。ただ、このような創造的な作業は、コンセンサスと結果の平等を重視してきた日本の政治家の手に余る作業のように感じます。

Posted by PALCOM at 2006年09月04日 22:04
その議論は
人口減少が続く日本好景気がすでに戦後最長にもせまるといわれているのにさらに高い経済成長が続くのかということがそもそも疑問なんですね

それを期待して、財政再建を述べるのは楽観的ではないかと

また、現在の国債の発行額は827兆4805億円あるんですよね。
経済的には、好景気になると金利が上昇します。
仮に1%金利が上昇したら、金利払いが8兆円上昇します。
消費税1%あげると税収が2兆円伸びるといわれるんで、1%金利が上昇したら、単純には消費税4%上昇させないけない計算になるんですね。

そのなかで、財政再建が可能なのかどうかは楽観しできないと思うんですよ
Posted by うんと at 2006年09月05日 18:53
どちらが楽観的かとか、実現可能性があるかという問題ではなく、これは考え方の順序の問題ですよ。

企業でいえば、売り上げが鈍化した場合に、まず経営者が真に検討すべきなのは、売り上げを上昇させる方策であって、人件費をカットすることではないのと同じことです。

金利をコントロールしながら、せめて、名目成長率を平均4%(これでもOECD諸国の平均より低い)程度まで上げるにはどうすればよいかを検討し、他方で、減税の財源としては、政府資産の売却や不要な公益法人の廃止などを真剣に検討する。その視点を持つことで、成長率の上昇を妨げている要素が浮かび上がってくるはずです。

景気がよくなれば、当然、金利も上がるわけですが、税収の自然増収が見込めるので、消費税を増税する必要はありません。理論的には、名目成長率が長期金利を上回っていれば財政は好転します。

繰り返しになりますが、このシナリオが容易だといっているのではありません。ただ、このようなシナリオを真剣に検討すれば、仮に増税が必要だという結論に達したとしても、それを最小限に抑えることは可能なはずです。




Posted by PALCOM at 2006年09月05日 20:50
名目成長率が長期金利のところちょっとよくわからないのですが
平成17年度の税収は47兆ですよ。
単純に考えると、名目成長率と長期金利が1%ずつ上がるとしたら
税収の伸び0.47兆<国債利払いの増加8兆

になるんですが

といっても私はPALCOM さんとはちょっと違った考え方をしています

日本政府や日銀が何をすべきかを考えるのもそれなりに重要で議論のする価値があるものだとは思いますが私たち、一般的な人は、それよりも、
どうゆうシナリオが一番、可能性が高いのかを考え、例えば、将来、国家破綻をしてインフレーションや円安がおこる可能性が一番高いのと考えられるのなら、まず外貨を持っておくことを最重要視する、




たけ先生がおっしゃるように国家破綻はしないが好景気でのインフレーション、がおこる可能性が高いと考えたら株を買っておく

などというような対策をたてるのが重要ではないかと思っています
Posted by うんと at 2006年09月05日 23:21
うんとさん、こんにちは。

経済学的な議論をする場ではないですし、その力もありませんので、簡単に記しますが、既発の国債は固定金利のものがほとんどですよね。とすれば、既発の国債の総額に上昇した利回りを乗じて、利払いの増加とするのは誤りだと思います。
Posted by PALCOM at 2006年09月06日 07:30
データがありましたので、捕捉しておきます。

経済成長率が2%から3%に上昇すると、税収は0.5兆円増加する。

金利が2%から3%に上昇すると、利払い費が1.6兆円増加する。

http://www.ufji.co.jp/report/research/hayawakari/2006/20060425.pdf

税収は約50兆円ですので、税収増加0.5兆円というのは直感に一致します。

また、借換債を含めた国の国債発行額は150-170兆円なので、利払い費が1.6兆円増加するという結論も直感に一致します。

いずれにしろ、現在存在する政府債務の総額800兆円に1%を乗じて利払いの増加とする、「うんとさん」の考え方は誤っていることになります。

もっとも、金利が上昇すると、税収増<利払い費増となり、なお政府債務の総額は増加するわけですが、債務総額の対GDP比が一定になればよいわけですので、利払いが増えても、GDP成長率がこれを上回れば、財政状況は好転していくことになります。

以上より、成長シナリオを採用すると金利が上昇するのでかえって財政が破綻するという考え方は誤りであると考えます。
Posted by PALCOM at 2006年09月07日 13:49
うんとさん
こんにちは
すばらしい情報ありがとうございました。
これで、今年や来年あたりいきなり、長期金利が数%上昇しても、財政破綻が突然発生する可能性はそれなりに低いのではないのではないのかとみなすことができました。
しかし、長期的には、といっても数年でですが現在存在する政府債務の総額800兆円に1%を乗じて利払いの増加とするという考えは間違ってないと考えます。
Posted by うんと at 2006年09月07日 18:01
すいません
名前を間違えて自分にさしてしまいました
PALCOMさんでした

すばらしい情報ありがとうございました。
Posted by うんと at 2006年09月07日 18:07
うんとさん

コメントありがとうございます。

うんとさんがご指摘のとおり、経済成長を続けること自体に困難性があるという問題はなお残ります。

野口悠紀雄氏の著作 「日本経済は本当に復活したのか」を読みましたが、特殊な国(人口の少ない産油国など)を除けば、1990年にトップだった日本の一人当たりGDPがアメリカ、アイスランド、アイルランド、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、ルクセンブルクなどに抜かれてしまい、いずれ、オランダ、イギリス、オーストリアにも抜かれると予想されていました。(総務省「世界の統計」より、為替の換算の仕方によって結果は変わるかもしれません。)

従って、財政破綻の問題とは関係なく、成長率アップは重要な課題といえるようです。

その他、日米企業の従業員一人当たり時価総額が比較されていて参考になりました。
トヨタが54万ドル、ソニーが22万ドルに対して、グーグルは5597万ドル、アップルコンピュータが366万ドルだそうです。


Posted by PALCOM at 2006年09月07日 22:07
今朝の東証1部の優良銘柄が軒並みストップ安売り気配にはびっくりしました。
特に、国家の財政について議論をしているところで、

いずれにせよ、国富が外資にもっていかれるということがないようにと願うばかりです
Posted by うんと at 2006年09月08日 10:38
財政について言えば、キーポイントは日銀の金融政策でしょうね。
90年以降現在に至る、資産インフレ抑制的な引き締めスタンスの運営を続けるなら、税収は伸びず、金利は必要以上にかさみ、財政赤字が必要以上に増えることは不可避でしょうね。財務省はそれに対応して歳出削減や増税を打ち出すでしょうから、福祉や医療も含めて国民生活は圧迫され続けることになるでしょう。
金融政策をもっと緩和的に運営すれば(まだゼロインフレの段階で拙速に量的緩和を解除したりゼロ金利を解除したりするようなことをやめれば)、こういうシナリオは避けられるのですが、全くもってもったいないことです。
Posted by dell at 2006年09月09日 01:30
dellさん。
ご指摘の点、全く同感です。
私の周りの経済通も日銀の経済運営には否定的です。
デフレが止まらない国で無理やり「インフレの陰がある。」とか言って利上げをしようとするのは理解に苦しみます。
株価も下落した上、マンションの販売にもかげりが見え、これで不景気になったら一体どうやって責任とるんだろう??と感じています。
これからもコメントよろしくお願いします。
Posted by たけ先生 at 2006年09月14日 21:02
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