2006年11月06日

医療をマーケットに任せてみる〜民間医療保険の問題@〜アメリカ医療の現状

こんにちは。

だいぶ間が空いてしまいました。

今回からは民間医療保険の問題を扱います。

この民間医療保険の問題こそ、医療を市場化した際にもっとも大きな問題点となりえます。

まずは医療市場化の先進国、アメリカの事例をみてみます。


・米国の医療費はGDPの15%を占める(日本は8%で約2倍)

・一人当たり医療費は年間5635ドルと世界一である。(日本は27万円でこれも約2倍)

・医療費の主な支払い元は
 民間保険 36%
 メディケア(高齢者向け公的医療保険) 19%
 メディケイド(低所得者向け公的医療保険)17%

・65歳未満のうち20%が無保険者である。

驚くことに無保険者が2割いて、全体の4割が民間保険に加入しています。
それにもかかわらずGDP比でほぼ日本の総医療費に匹敵する公的医療費支出が強いられています。

このことから、二つのことが示唆されます。

@財務省の悲願にもかかわらず、医療を自由化したところで医療費の公的給付を抑制することはおそらく困難である。

A医療を自由化すると、現在の総医療費に匹敵する巨大なマーケット(30兆円前後)が出現する。

@は残念な結論です。結局大多数の国民は増税ないし保険料を引き上げた末に受けられる医療サービスが低下することが示唆されるからです。

Aは巨大マーケットの出現により、多くのビジネスチャンスがうまれます。
一大市場となるので国の成長率を押し上げることができるかもしれません。

ところが医師の眼から見ると民間医療保険は非常に難しい問題を抱えています。特に通称イチゴ摘みと呼ばれる問題は保険の本質に内在する問題です。

次回はこのイチゴ摘みについて考えてみたいと思います。



posted by たけ先生 at 19:03| Comment(8) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
アメリカの医療費の高さはあの劣悪な食生活・食文化にも原因があると思いますけどね。食文化が日本のようになれば医療費も半分くらいに抑えられそうな気もします。
Posted by at 2006年11月07日 00:45
予防で医療費が下がるってのはよくある誤解です。結局人間は死ぬわけで予防はその時期をずらすだけですから。食生活で予防できる血管の病気よりもあんまり予防できない癌の方が金かかりますし。
アメリカの医療費は司法に流れすぎている気がしますね。
Posted by 通りすがり at 2006年11月07日 18:38
atさん、お久しぶりです。
通りすがりさん、鋭いご指摘ありがとうございます。「予防で医療費は下がる」は厚生労働省が10年かけて国民の皆様に流し続けた嘘で、政府首脳もだまされているので仕方がないかもしれませんね。
アメリカの特殊性は懲罰的賠償制度など司法に流れているはご指摘の通りです。
直接的な賠償金のほかにもいわゆる「防衛医療」による無駄な検査の影響も非常に大きいようです。
http://www.urban.ne.jp/home/haruki3/america.html
Posted by たけ先生 at 2006年11月07日 18:44
こんにちは。ちょっと教えてください。

>・米国の医療費はGDPの15%を占める(日本は8%で約2倍)

>それにもかかわらずGDP比でほぼ日本の総医療費に匹敵する公的医療費支出が強いられています。

(1)米国の公的医療費支出はGDP比8%と理解してよいのですか?
(2)たけ先生の仰る「公的医療費支出」は、
・公的医療保険の運営主体が医療機関に支払う保険料か、
・公的医療保険のうち国庫負担分
のどちらでしょうか?

不勉強のため基本的なことで恐縮ですが、よろしくお願いします。
Posted by 空色 at 2006年11月08日 18:44
予防で医療費は抑制できないとのご指摘ですが、
言われてナルホドと納得できる部分と、そうでない部分もあります。

アメリカで普通に良く見かける曙級のおデブさんと普通の体型している人とでは、日常生活にかかる医療費のコストが違うと思えてしまいます。
例えば癌で死ぬにしても、そこに至るまでの肥満にかかるコストがプラスアルファされる訳でしょ?
加えて、医療費の多くを占める(と聞いたことがある)虫歯や歯槽膿漏なんかは各々が予防することで医療コストは下げられないのですか?

専門家ではないため稚拙な意見で恐縮ですが、その辺の話をもう少し詳しくお教えください。
Posted by at 2006年11月09日 18:31
空色さん、こんにちは。
「医療費支出のうち、公的医療保険でカバーされているものの割合」ですね。
日本の医療費のGDP比8%も総医療費支出ですからこの部分については自己負担分も含むと思います。

美容整形や歯科など自由診療の医療支出はどうカウントされているのでしょうかね??調べておきます。

atさん。もっともな疑問と思います。
歯科については自由診療の割合も高く、かつ医療費のそれほど大きな割合を占めてはいません。
少なくとも公的支出の大きな割合ではないと思います。

糖尿病など生活習慣病は確かに予防することでその分の医療費は下がると思います。

しかし、生活習慣病の方は長生きはできないという残酷な医学的事実があります。
また医療費の大きな部分を占めるのは終末医療など老人医療なので、むしろ予防した方が医療費がかさむおそれすらあり、一概には言えないと思います。

もっとも各人が生活習慣病や歯周病に苦しまずに健康に過ごせることはお金に替えられない価値があります。(私はお金以上と思います。)よって予防の啓蒙自体は大賛成です。
ついでにタバコ税も上げてくれるとなおいいのですが。(笑)

ただ上記の事情から「予防の普及で医療費は安くできる!!」は大いに疑問です。ついでにいくら啓蒙したって全く節制も歯磨きも禁煙もしない方が非常に多いことも付言しておきます。(笑)
Posted by たけ先生 at 2006年11月09日 20:25
あと付言すると「予防で医療費は下がる」はもしかしたら20年後には真実になるかもしれません。しかし、すでに最も人口構成の多い団塊世代については60歳を越えた今から予防に力を入れても、医学的効果は大いに疑問です。
少なくとも予防と啓蒙によるここ10年の医療費削減は困難であると考えます。
Posted by たけ先生 at 2006年11月09日 23:10
お金というアクセス制限をかけたほうが医療サイドにとっても患者にとってもいい気がするんですけど気のせいですかね?
医療者の労働条件が改善すれば質も上がる気がしますし病気にかかれば破産するのであれば国民も健康に気をつけ予防医学になる気がしますがいかがでしょう?それにお金を稼がなきゃってみんな一生懸命仕事するようになってニートとかもなくなりませんかね?
それにお金がかかるものの方がありがたみが出てよさげな気がします。
Posted by 学生 at 2006年11月11日 13:09
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