2006年11月12日

医療をマーケットに任せると〜イチゴ摘みA

こんにちは。

医療を民間保険に任せた場合の問題点であるイチゴ摘みについて今日も書きたいと思います。

前回のブログで「リスクの高い人からは多く保険料を取ればいいし、リスクの低い人からは保険料を取らなくていい」と書きました。

具体的な例で考えて見ます。

今ここで、
保険会社たけ生命が
「毎月10万円で、ガンになったとき最高のガン治療が受けられることを生涯保障するがん保険スーパーキャンサー」
を発売したとします。

この商品はバカ売れし、たけ生命には莫大な保険料収入が入りました。
これを見たライバルのゴールド生命は次のような商品を対抗として打ち出しました。

「タバコを吸わない人だけが加入でき、毎月8万円で最高のガン治療が受けられることを生涯保障するがん保険ノンスモークキャンサー」

喫煙者はノンスモーカーに比べて肺がんや食道がんになるリスクがはるかに高いことは医学的に実証されています。
したがってノンスモーカーだけを対象とするゴールド生命の医療保険はリスクが低い(ガンになる確率が低い)ため、たけ生命の保険より保険料を安く設定できるわけです。

当然今までたけ生命のスーパーキャンサーに加入していたノンスモーカーは保険料が安くなるのでゴールド生命のノンスモークキャンサーに加入します。

その結果、たけ生命のスーパーキャンサーには喫煙者しか残らなくなります。
するとどうなるでしょう。

たけ生命はスーパーキャンサーの保険料は10万円から値上げせざるを得ません。
今までの10万円という保険料はリスクの高い喫煙者とリスクの低いノンスモーカーが共に加入していたからペイしていた価格です。
ハイリスク群である喫煙者しか残っていない(=リスクが上昇している)以上保険料(=プレミアム)を上昇させなければならないのです。

このように病気になるリスクの低い人を安い保険料で囲いこむことを良いイチゴだけ選別して摘むことに例えてイチゴ摘みと呼びます。

そして喫煙者、糖尿病の家族がいる方、ウエストが90cm以上の人、家族にガンがいる人・・・など病気になるリスクが高い人はより高い保険料を払わなければ民間医療保険に入れなくなります

「あなたは太っていてタバコを吸うので保険料は月20万です。」と査定され、いざ病気になったときに喫煙や肥満に関する申告漏れがあれば告知義務違反と認定され、医療費の支払いを受けられない!!ということもありえます。
もちろん医療が自由化された世界では民間医療保険に加入できない人や自費負担できない人は高度な医療は受けられません。したがって、保険会社の不払いは事実上高度な医療を受けられないことを意味します。

このように民間保険の競争原理にさらされれば、病気になるリスクが高い人は保険に入りにくくなります。
しかし、保険は本来「病気になるリスクをみんなでわかちあう」ものです。
したがって、保険の理念とイチゴ摘みは矛盾する側面を強く有します。

皆さんはこの問題についてどう思いますか??
posted by たけ先生 at 22:16| Comment(7) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
医療保険を民間だけで請け負うとそうなるのでしょうね。(アメリカはもうそうなっているのでしょうか?)
全員がリスクを分担する社会保険と民間保険の併用は考えるべきかもしれませんね。日本の現状を考えると社会保険4割負担(1割負担増)、残りは自己責任ぐらいがちょうどかもしれませんね。
Posted by おしお at 2006年11月13日 12:44
たけ先生、こんにちは。

私も、医療保険を民間だけで請け負うとそうなると思います。民間の保険会社は経済合理性で動かざるを得ないので、これは理論的な帰結だといえます。

結局、おしおさんが言われるように、一般論としては、自己責任部分と福祉で負担する部分をどのように分けるかという問題だと思われます。

保険料を増額されても仕方がないリスクファクター(喫煙など本人の生活習慣に起因するもの)と、先天的な難病や本人の責任に帰すことができない後天的難病とに分けるべきなのでしょう。

しかし、難病であるにもかかわらず、潰瘍性大腸炎やパーキンソン病の公費補助が絞り込まれているように、その線引きは難しいといえます。また、病気をかかえている者は、医療費がかかる上に、収入が少なくなりがちなので、自己責任を過度に強調するのは妥当でないと思います。
Posted by PALCOM at 2006年11月14日 11:55
たけ先生

 完全に民間保険依存にすると、不確実性の経済学でいうところの「逆選択」が発生するわけですね。

 「イチゴ摘み」は情報の非対称性がもたらす「市場の失敗」の典型例ですね。この場合、経済学のセオリーでは、公共財的なセイフティーネットが必要になります。それが、おしおさんやPALCOMさんが言う、最低限度の社会保険制度ということになるのでしょう。

 それ以外には、経済学のセオリーに従えば、「保険会社」と「加入者」の利害が一致するような仕組み作りが行えないかどうか考えることになります。たけ生命の保険に加入し続けることの方が、保険を乗り換えるより何かメリットがある仕掛けが作れればよいわけですが・・・。なかなかいいアイデアが思いつきません。

 この連載、楽しみにしています。

Posted by cpainvestor at 2006年11月14日 22:19
生命保険に関しては、中途売却の可否についての最高裁判決が出ましたので、私のブログでご紹介しました。

ご興味があれば、ご一読ください。
Posted by PALCOM at 2006年11月15日 09:29
おしおさん、コメントありがとうございます。
まさにアメリカはそうなっていまして、民間医療保険会社は新たな「社会悪」として非難の的になっています。
 あらゆる手段を使って医療を市場原理化しようとしているオリックスも日本の悪の代名詞になるのはそれなりにリスクと思うのですがあまりピンと来ていないようですね。
 この国では「社会悪」とみなされると消費者金融のようにある日突然活動が禁止されることがありますからね。
Posted by たけ先生。 at 2006年11月16日 01:45
PALCOMさん、cpainvestorさん、コメントありがとうございます。

「医療費がかかる上に、収入が少なくなりがちなので、自己責任を過度に強調するのは妥当でない。」

「経済学のセオリーでは、公共財的なセイフティーネットが必要になります。」

まさにご両名のコメントの通りと思います。
医療を市場化するということはこうした前提を覆しすことになります。

それはそれで国民的合意があればありうる選択肢と思うのですが、その場合「貧乏な病気になるリスクの高い人は潔く治療を諦めてくれ。」ときちんと説明する必要があります。

しかし政治家も経済財政諮問会議も全く説明リスクをとろうとしないで「ばら色の市場化された医療」を宣伝するのは不誠実ではないかと思います。
Posted by たけ先生 at 2006年11月16日 01:51
がん保険(ガン保険)の資料請求は、ほけんの窓口へ。
FPによる無料電話相談を実施していますので、ご利用ください。
ご来訪お待ちしています。
Posted by がん保険・ガン保険 at 2007年11月05日 10:30
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