2007年02月09日

柳沢厚労大臣発言のピンボケ

こんにちは。

しばらくぶりの更新です。

この間世間では柳沢厚労大臣の

産む機械が減っているのだから一人一人に(たくさんの子作りを)がんばってもらわないといけない
という発言が
「女性蔑視だ。」
「女性を機械に例えるとは何事だ!」

と厳しく批判され、地方選にも影響を及ぼしたそうです。

ところでこの発言、例え方も悪いのですが私は発言内容自体にも無知に基づく事実誤認があるように思えてなりません。

本当に出産適齢期の女性の数の減少が少子化の原因なのでしょうか??
現在日本では晩婚化が進んでいるため出産時期がずれ込んでいます。かつてと異なり現在では28〜32歳くらいに出産年齢のひとつのピークがあります。
ところがこの28〜32歳というのは団塊ジュニア世代に当たり非常に人口の多い世代です。

減っているのは出産適齢期の女性の数ではありません。
結婚している状態にある出産適齢期の女性の数なのです。

今の少子化の原因は一言で言えば経済問題です。
団塊ジュニアは「失われた10年」の不況のしわ寄せを最も受けた世代です。
この世代の男性は失業率も高く、可処分所得が相対的に低いため、女性が望む結婚後の生活水準を維持できる人が少なくなっています。

さまざまな調査で男性の年収と結婚率は強い正の相関があることがわかっており、団塊ジュニアの晩婚化、非婚化はこの世代の男性の可処分所得の低さと大いに関係があります。

また近年急増している若年離婚も経済的要因が大きな理由を占めていることが示唆されています。

さらに育児コストの上昇と可処分所得の減少により女性が仕事を休めず、出産を断念していることも無視できない要因です。すべての女性が育児休暇を取れるほど理解があり身分が保証された恵まれた労働環境にあるわけではありません。特に非正規雇用、フリーターの場合、妊娠は即退職の強要につながることが多いと思われます。

晩婚化、非婚化、若年離婚、経済的理由による出産断念・・・。

いずれも根はフリーター問題と一緒なのです。
そして現在の政権はフリーター問題を解消するべく「再チャレンジ可能な社会」を掲げ成立した政権です。
厚生労働大臣は少子化、フリーター問題、そしてその背後にある団塊ジュニアの雇用の不安定化と賃金問題を解決する直接の主管大臣です。

その大臣がこうした経済問題の少子化への影響をまったく考慮せずに能天気に「産む機械が減っているのだから一人一人に(たくさんの子作りを)がんばってもらわないといけない」などと単純な数の問題に帰着しているわけです。

例えの不適切さより厚生労働大臣の少子化問題に対する理解の乏しさと不見識のほうがよほど深刻です。

少子化は本来国家を挙げて取り組むべき最優先課題です。
私は憲法改正にはどちらかと言えば賛成ですが、あえてはっきりいえば、少子化問題に比べれば憲法改正など瑣末な問題に過ぎないと思います。

子供がどんどん減り続ける国で「国のかたち」や「国の誇り」といった抽象的な議論ばかりしていてどうなるというのでしょう??

少子化問題はもう一刻の猶予もありません。団塊ジュニアがたくさん子供を産んでくれるかどうかが日本の少子化を食い止める最後のチャンスです。


団塊ジュニアがもし出産しないまま結婚適齢期を過ぎてしまえばこの後いくら予算を投入しても少子化に歯止めをかけることはきわめて困難です。
少子化対策はここ2〜3年の間になんとかしなければならない「いまそこにある危機」なのです。

このまま少子化が進行すれば日本は

@一人一人が給料はそのままで長時間労働する

A移民を大量に受け入れる

B現在の生活水準を切り下げる

の3つのうちいずれか、あるいは全部を選ばなければならなくなります。私は@〜Bいずれも「美しい国」とは思えません。
現政権には問題の本質を認識して、適切な政策を選択してもらいたいと思います。
posted by たけ先生 at 16:35| Comment(18) | TrackBack(1) | 政治 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんばんは。

今回のエントリは私もブログで取り上げたテーマなので、コメントしたいと思います。

>減っているのは出産適齢期の女性の数ではありません。
>結婚している状態にある出産適齢期の女性の数なのです。

いまいち違いがよくわからないのですが、これが違うと対策に影響が出てくるのでしょうか?

また、大臣は
「若い人たちの雇用形態が、例えば婚姻状況などに強い相関関係を持ち、雇用が安定すれば婚姻率も高まるような状況なので、まず若者に安定した雇用の場を与えていかなければいけない。また、女性あるいは一緒の所帯に住む世帯の家計が、子どもを持つことで厳しい条件になるので、それらを軽減する経済的支援も必要だろう。もう一つは、やはり家庭を営み、子どもを育てることには人生の喜びのようなものがあるという意識の面も若い人たちがとらえることが必要だろう。」
と述べています。

たけさんと同じようなことを言っていると私には感じられるんですが、これではダメなんでしょうか?
Posted by AKI at 2007年02月09日 19:31
akiさん、コメント有難うございます。

前段はまったく違うと思います。
そもそも人が減っているならなかなか何をやっても難しいのですが、経済的理由により晩婚化、非婚化、離婚が続いているなら経済支援により少子化を何とか止められる可能性があります。

後段の発言は散々叩かれた後の6日の会見での発言ですね。この認識には問題はないと思います。
しかしそもそも大臣になった段階で内閣が一致してこうした認識を共有して最優先課題として取り組まなければならなかったはずです。

「産む機械」発言はバッシングを受けた段階ではこうした「経済問題としての少子化」に対する認識が薄く、「個人レベルの頑張り」に責任を転嫁しようとしていたとしか思えない、という意味で極めて不見識です。
率直に言って厚労大臣としての(さらに言えば経済閣僚としても)能力を疑わせるに足る発言だと思います。

Posted by たけ先生 at 2007年02月09日 21:06
前段はおっしゃるとおりだと思います。しかし、日本のような壺型ないし逆ピラミッドの国が人口増やそうとするとシャネル型(こんな形の国が無いので勝手に命名しました)という無茶な型になることになりますが、シャネル型は現役世代への負担が大きすぎて実現可能性がないように思います(ならば人口が一度減ったら戻らないではないかという当然の突っ込みがありそうですが、そのためにうばすて山があったのでしょう)。

うばすて山を団塊が受容するとはとても思えないのでやはり@〜Bの選択は必至。しかし保守的な団塊がAを受け入れるまでに追い詰められた時にはもはや大量の移民は来るはずがない。よって今そこにある危機は移民の受け入れと考えますがいかがでしょうか(言い換えると一旦現役世代を増やさないと少子化は解決出来ないということです)。

Posted by roadster at 2007年02月10日 10:16
roadsterさん、おっしゃるとおりと思います。
移民についても日本が経済的な地位が弱くなり、円安が進めば
「しょうがない。いやいやながら移民を受け入れてやるか。」と団塊と政治家が言う頃には
「お前みたいな貧乏国、行くわけないだろ!!円で給料もらったってしれてんだよ!」
と笑われてしまうわけです。

いずれにしても日本の先行きは暗いのですが、それでもここ数年の出産数次第では闇を弱める作用はあるのではないでしょうか??
Posted by たけ先生 at 2007年02月10日 12:48
ついでに言うと小泉前首相は少子化対策を部下に提示されたときに
「金のかかることばかりだな。昔は金などかけずに子供をたくさん産んでいた。何とかならないのかな。」
と言ったという記事を読みました。

医療改革関連法案の際に
「もっと安く質の高い医療を提供するというのが国民の総意なので医療従事者は頑張れ。」とも発言したとか。

いずれも記事レベルなので真偽はわかりませんがありそうな発言です。
この辺が政治家としての彼の視野の限界なのでしょう。再登板も取りざたされていますが、多分以前のような熱狂的な支持が彼を包むことはもうないでしょうし、おとなしくしておいて頂けたらと思います。
Posted by たけ先生 at 2007年02月10日 12:52
本当に少子化の理由をそんな複雑に考えているのですか?

単に先進国ではセックス以外の娯楽が増えただけですよ・・・





Posted by 凡人 at 2007年02月12日 01:58
本当に少子化の理由をそんなに単純に考えているのですか??

アメリカやイギリスやEU諸国でもセックス以外の娯楽は増えていますよ。
Posted by tanaka at 2007年02月12日 18:53
子供が生まれない理由なんて普通に働いていれば簡単に分かると思います。

非正規雇用者は金が無い。

正規雇用者は時間もパワーも無い。


不安定すぎて子供を作るリスクが取れません。
加えて、こんなアホな発言をする人間が、国の指揮を取っているのですから尚のことですね。

正直、皆が子供を作らないのは、きちんと子供を育てる気がある人なら、正常なことだと思います。私は作っても一人が限界です。
Posted by ゆーき at 2007年02月12日 23:18
>>凡人さん、もちろんそれも一因と思います。ただそうするとどうしてもtanakaさんのおっしゃる通り、日本と韓国で特に少子化がひどいのはどうしてだろうと思います。
この二ヶ国でより都市への人口集中が進んでいるため、と考えると凡人さんの説明もアリな気もします。

>>ゆーきさん、基本的には同感です。
「正規雇用者は時間もパワーも無い。」の件は長時間労働とも密接に関連がありそうですね。

有名なザアールの奥谷禮子社長(規制緩和派の論客でもあります。)テレビの番組で「長時間労働して夜遅く帰ってきたあと、セックスできるパワーのある男が日本にいないのが問題なのよね。」と発言したとか。
もう馬鹿かあほかと。
ホワイトカラーエグゼンプションも勤務体系をフレキシブルにするメリットもあると思うのですが、推進しているメンバーが八代教授、柳澤大臣、奥谷社長といった面々では中身が何かを論ずるまでもなく反対した方がよさそうに思えてしまいますね。

これからもよろしくお願いいたします。
Posted by たけ先生 at 2007年02月13日 17:29
少子化の原因は戦後の中途半端な欧米的価値観の模倣にあるんじゃないですかね?

個人主義は盛んに喧伝しながらも、同時に仕事より家族を大切にする価値観は根付かせず、「父ちゃん元気で留守がいい」なんて言い出す始末。

女性は社会にどんどん進出しつつ、自分より収入の低い男性とは結婚しませんし…。要するに男は女を養うものだって価値観は健在ですよね。

女性が権利を獲得する度に、男性はさらに大きな義務を背負う今の矛盾した風潮をどうにかしないと、結婚なんてできないし、ましてや子供なんて無理です。そんな人いたらマゾです。

女性の権利も大事だけど、もっと大事なのは男性の解放ですよ。
Posted by at 2007年02月13日 18:32
少子化の原因は戦後の中途半端な欧米的価値観の模倣にあるんじゃないですかね?

個人主義は盛んに喧伝しながらも、同時に仕事より家族を大切にする価値観は根付かせず、「父ちゃん元気で留守がいい」なんて言い出す始末。

女性は社会にどんどん進出しつつ、自分より収入の低い男性とは結婚しませんし…。要するに男は女を養うものだって価値観は健在ですよね。

女性が権利を獲得する度に、男性はさらに大きな義務を背負う今の矛盾した風潮をどうにかしないと、結婚なんてできないし、ましてや子供なんて無理です。そんな人いたらマゾです。

女性の権利も大事だけど、もっと大事なのは男性の解放ですよ。
Posted by 低収入男性 at 2007年02月13日 18:32
少子化の原因を自分を例に考えてみる。

現在、共働きで子供はなし。


子供を産んだ場合のデメリット
・妻が会社(正社員)をやめるので収入減
・子供の教育費がかかるので、支出増
子供を産んだ場合のメリット
・精神的安定感



子供を作っても、会社や国からの支援はほとんど期待はできない。
逆に、子供を作らないことに対する、世間の理解がだんだん得られてきているのでデメリットがなくなっている。(昔は子供を作って、世間に認められた気がします。)




とりあえず、少子高齢化と国債の問題は、ひっくり返しても結論はかわりっこありませんので、その上でどのような投資がよいのか?書いて欲しい〜〜〜。

Posted by やっほー at 2007年02月13日 21:02
atさん、社会学的にはおっしゃる通りと思います。山田昌広先生の「新平等社会」も女性の専業主婦志向(=高収入男性を求める志向)が変わっていないことを論じていました。

現政権がいまひとつ評判が悪いのもこの辺に原因がありそうです。

首相の頭の中にある「美しい国」は男性が一家の大黒柱としてきちんと働いて、専業主婦の女性を養い、女性は子供を二人生んで家族は父親を尊敬する・・・。といった古き善き家父長制なのでしょう。それも男性がきちんと家族を養える収入あっての話です。そうした裏づけがないのに女性に謙譲と忍耐を求めても笑われてしまいます。

しかし、そういってる首相が若年男性の低収入化を促進するような政策を経団連のいいなりに取っている。首相のやりたいこととやっていることがまるで正反対の方向を向いている。

首相に同情するならグローバリゼーションにより、かつてないほどナショナリズムと資本主義の相性が悪くなり、小泉改革(=資本主義化)の継承と美しい国づくりが矛盾してしまうようになった点ですが、支持率低迷のすべての元凶はここにあると思います。
Posted by たけ先生 at 2007年02月14日 01:17
>>やっほーさん。
「少子高齢化と国債の問題は、ひっくり返しても結論はかわりっこありません」

・・・これが事実なら、日本のGDPは(移民を大幅に入れる以外に)期待できないので、当然日本株も期待できないと思います。
日本株のポジションを下げるしかないと思いますが、私自身はまだ少子化は何とかできる余地があると希望を持っているので、柳澤発言に腹が立ったわけです。
Posted by たけ先生 at 2007年02月14日 01:23
返事が遅くなり申し訳ありません。

産む機械発言なんですが、個人的にはマスコミによる一部分があまりに一人歩きしすぎているように思います。
しかし、大臣の全発言内容はネット上には見あたりません。マスコミが掲載しないんですから、当然なんですが。

「経済問題としての少子化」の話はしていない、「個人レベルの頑張り」のみに期待している、とのことですが、たけ先生はどこで全文をお知りになりましたか?

http://www.nakagawahidenao.jp/pc/modules/wordpress0/index.php?p=436
産む機械発言は2030年の話が出だしです。そこから人口統計や合計特殊出生率の話に移行しているわけで、私にはごくごく普通の内容だと思えるんですよね。
Posted by AKI at 2007年02月14日 23:05
akiさん、なるほど「2030年時点」の話を前提としているわけですね。これだと確かに私の批判は的外れかもしれません。
しかし、言い訳ではないですが2030年以降も国が続くわけで、2040年時点の出産可能年齢にある女性の数はここ数年の出産数で規定されるわけです。
2030年時点の出産可能女性数の数が少ないことが決定されているとなれば、やはり団塊ジュニアがいま子供を経済的理由で産みにくい問題に最優先に着手しなければならないと思います。

この問題に関しては朝日新聞の
「自民党内には女性が家庭に戻りさえすれば少子化対策が進む、と短絡的に考える人が少なくないように思う。」との指摘に共感できます。
また世間の批判も、「女性蔑視」よりは「団塊ジュニアの経済的問題としての少子化を精神論と説教で対処し様としているように見える現政権の雰囲気」に向けられていると思います。

中川幹事長は文中で「職業婦人」という言葉を乱発していますが、お前一体いつの人間なんだと。(笑)
本当に女性の就業増加により労働生産性を上げようとしている立場の人なのでしょうかと。
Posted by たけ先生 at 2007年02月15日 22:24
現状は子育てとその環境の隔たりが非常に大きいですよね。

楽な生活をするためには共働きでないと厳しいですが、共働きだと子育ての負担が非常に大きくなります。
子育ての環境面の配慮が必要です。

団塊ジュニアも出産最適齢期とは言えない年齢になりつつありますから、対策はいますぐに行わないと間に合わないと思いますが、動きの遅い政府ですからたぶん間に合わないでしょうね・・・。
Posted by AKI at 2007年02月17日 17:44
今のまま少子化が進めば、3000年には総人口が29人になるみたいです。
ここまで来ると笑うしかありませんね。
Posted by AKI at 2007年02月17日 17:45
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Tracked: 2007-02-14 13:39
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