2007年02月18日

「フラット化する世界」の株式への影響@

こんにちは。

米国株のことを書こうと思ったのですが、その前段階として書籍を紹介します。


トーマス・フリードマン著「フラット化する世界」です。



すでにビジネス誌やITセミナーなどで広く紹介されているため、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。

原題は「The world is flat」で、こちらの方がより本書の内容を正確に表していると思います。

flatとはでこぼこしていない、転じて障壁や妨げるものがないというイメージの英単語で、本書の内容はこれがすべてです。

「従来世界にあった地理的、文化的、社会的断絶(規制など)はインターネットと社会主義国の消滅、およびこれに伴うBRICSの急成長により次々と消えていっている。
企業はいまや、最も安いコストで生産できる地域で生産し、もっとも消費が多い地域で販売することができる。
例えばアメリカではコールセンターの仕事は英語を話せるインド人に次々と奪われている。
その結果、インドとインド人を雇用しているアメリカ企業(とその株主)は利益を得る替りに、従来コールセンターで働いていたアメリカ人は職を得られなくなる。
アメリカ人労働者はより高い付加価値を生産できる職種に就かなければ以前と同じ生活水準を維持できない。」

といった内容です。

本書の内容にはほぼ同意しますが、同時にこの内容は株式投資にも激変を及ぼすものです。
フラット化する世界の行き着く先は、実は企業の国籍など問題になりません。なぜなら規制が撤廃された世界では、企業は最も安いコストで製造できる地域に工場を作り、もっとも消費の多い地域で販売をし、最も税金の安い地域で納税を行う、といった行動を取れるようになるからです。

トヨタもエクソンもジョンソンアンドジョンソンもプロクターギャンブルもゴールドマンサックスもHSBCも世界中に拠点をもつ巨大企業でありつつ、国籍に縛られることは徐々になくなって行きます。

またフラット化する世界では、徐々に国籍や人種、性別による差別なども問題にならなくなると思われます。
もっとも高い付加価値を企業に対して与えられる人材であれば、日本人であろうと韓国人であろうとインド人であろうと関係ありません。(アジアには言葉の壁もありますが・・・)
少なくとも英語圏ではアメリカ人である、というだけで雇用が維持されることはもうなくなります。
その代わり、どの国の中でも学歴や職種、収入による区別と格差の拡大が進むと思われます。

日本人であるか韓国人であるか中国人であるかよりも大卒であるか英語が話せるか、資格を取得して企業に高い付加価値を与えられるかが問題になってくるのでしょう。

こうして考えてみると、なぜ今「格差社会」という言葉がこれほど存在感を持っているのか、なぜ企業が空前の収益を上げているのに法人税引き下げが絶えず議論に上るのかが比較的スムーズに理解ができます。

つまり格差の拡大は小泉改革のせいなどではなく「フラット化する世界」の必然です。
法人税引き下げは日本の企業が高い法人税を嫌って日本から出て行く、もしくは税金の安い国の企業に買収され、日本に納税しなくなるのを防ぐために必要というわけです。

しかし、こうしたフラット化は同時にすごい反発を世界のすべての国で巻き起こすことにもなります。

次回は安倍首相の苦悩について考えてみたいと思います。
posted by たけ先生 at 12:18| Comment(6) | TrackBack(0) | | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
日本は、日本語という他の国とは違う言語圏なので、
フラット化が進めば進むほど、
他の国よりも人材面で苦労をする企業が増えそうな気がします。

確かに株式市場についても衝撃がはしると思います。
株式投資関連の本を読む方は非常に多いですが、
このような本も本来なら把握しておくべきだと思います。
Posted by tokmin05 at 2007年02月19日 00:39
全く同感です。

全く同じ趣旨のことをGREE(SNS)で以前書かせて頂きました。我が意を得たりといった感じです。

(先進国における)労働分配率の低迷と企業業績の向上は必然。小泉さんなんて何も関係ない。。

「フラット化する世界」を呼んで、即、ど真ん中のINFOSYSをロングしました。

まだこの流れは始まったばかりでしょうね。
Posted by Sky at 2007年02月19日 01:03
フラット化する世界では企業が儲かるというのは必ずしも自明ではないと思います。適切に対処出来る企業(おそらくINFY,PG,GSなど)は儲かるでしょうがそうでない企業が消滅の危機に立たされます。
フラット化とは同じ能力に対して違う賃金が払われていること、同じ商品に違う値段がついていることに対する裁定だとすると、この取引でアメリカ社会もインド社会も大きな利益を得ますがその配分は必ずしも平等ではなくまさにそのことが反発を生むのでしょう。
ちなみにこの利益は企業と労働者と消費者で分け合うことになります。フラット化の文脈では大企業の横暴や労働者の絶望的な格差が描かれやすいのですが、フラット化する世界に最も適応力があり必然最も利益を得るのは消費者だと思います。

消費者からの視点が少ないように思ったので書き込んでみました。A以降で書かれるご予定だったのであればすいません。格差への鋭い考察を楽しみにしています。
Posted by roadster at 2007年02月19日 20:03
roadsterさんのご考察興味深く拝読致しました。

たしかに一般的に消費者は潤います。問題は、その消費者がどのような立場の労働者であるかという点だと思います。

仰るように、「The world is flat」のポイントは、「世界規模」での「物・サービスの裁定取引」なんだと思います。

この現象で世界全体の生産性は間違いなく向上します。

提供するサービス・物に比して不当に高い報酬を搾取していた先進国の企業の業績とその従業員の給与は著しく減退すると思います。

一方、提供するサービス・物に比して不当に低い報酬しか得られなかった発展途上国の企業の業績とその従業員の給与は大幅に増加していきます。

さて、消費者はどうなるのか。

消費者といってももう一面では労働者です。したがって、労働分配率が大幅に低下していく企業の従業員は、「以前と比べて」貧しい生活を余儀なくされるのではないでしょうか。

ただし、世界全体の生産性が向上しているため、発展途上国から安く物やサービスを購入すると、ある程度、その相殺が図られるでしょうが(ex 中国製の安い工業製品などの購入により支出の低減を図ることができる)、結局、どの程度「不当」に報酬を得ていたか、その「程度」で相殺の度合いが決定されていくんだと思います。

その意味で、高度な技術力・ブランドで商品付加価値をつけられるグローバル企業とその従業員はこの世界の荒波の影響を比較的受けにくいでしょう。一方でドメステックでなあなあに甘んじていた企業とその従業員はミゼラブルになるんだと思います。

後は、新興国の豊かさが先進国に追いつくのを待つしかない。追いつけば、裁定は解消するでしょう。

なお、世界の生産性が向上するということは、世界中に視野を向ける投資家にとって間違いなく追い風です。一般的には、経営者も追い風だと思います。

Posted by Sky at 2007年02月19日 22:08
tokminさん、roadsterさん、skyさん、コメントありがとうございます。
皆様のおっしゃるとおりと思います。
特にskyさんのおっしゃる「世界規模での物・サービスの裁定取引」、これこそがグローバリゼーションの本質であると思います。
次回以降はナショナリズムとグローバリゼーションの関係について記していきたいと思います。
Posted by たけ先生 at 2007年02月20日 23:14
Skyさんコメントありがとうございます。

仰る通り一般的には、消費者、企業(株主)、労働者はいずれもフラット化から利益を得ると思います。だからこそ、多少の摩擦があってもこの流れは止まらないとも考えます。

摩擦はいろいろあると思いますが、ここでは消費者、株主、労働者の間で起こる利益の奪い合いと、消費者同士、企業間、労働者間での利益の奪い合いを問題にします。

消費者、企業、労働者はこの順番で強いと思います。しかし、Skyさんのご指摘の通り労働者はほぼ全員消費者であるし、年金や貯金を通じた間接的なものも含めれば大抵の労働者は企業でもあります。マルクスの時代と致命的に異なるのがここで、であるならばここの摩擦はそれほど深刻な物にならない可能性があります。

これもご指摘通り深刻な問題になるのはそれぞれの階級間での摩擦なのでしょう(消費者間の摩擦では、敗北する消費者〈同一のサービス・物に高い値段を払う人〉の敗因は情報収集能力の欠如です。よって敗北者は自分が敗北していることに気づかない可能性が高く、やはり深刻なものとはならないでしょう)。

企業間、労働者間での敗北者がミゼラブルなのは間違いありません。また勝敗を分けるのはどれだけ不当な既得権益を得ていたかであるというのも全く同意です。

ただ、これは社会が変化する物である以上避けられない新陳代謝であり、この新陳代謝を止めたり遅れさせたりするコストはちょっと想像を絶します。

ここの敗北者はノイジーマイノリティに成りやすいので、そのコストを社会に強いるような政策が通る可能性は短期的にはありますが、冒頭に書いたように私は楽観視しています。
Posted by roadster at 2007年02月21日 00:41
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